バイオプロセス中に潜む未知代謝物をつける

計測技術の役割

ノンターゲット計測技術は、サンプル中に含まれる成分のカタログ化を実現します。

例えば、培地中に生育阻害物質の存在が疑われる場合には、生育阻害が生じる培地と生じない培地の成分を比較することで、阻害に関与する候補成分を効率的に抽出できます。 得られた知見をもとに阻害物質を除去することで微生物の生育改善が期待できます。

また、バイオプロセスを担う微生物が目的物以外の未知副産物を生産している疑いがある場合には、培地中成分のカタログから副産物を同定できます。これにより、副産物生合成経路の遮断や培養条件の最適化を通じて、目的物の生産効率向上が期待されます。

さらに、有用微生物の中には、未知の高付加価値成分を生産するものが数多く存在すると考えられます。培地成分の網羅的なカタログ化は、こうした有用成分の発見と利活用の契機となり、新たなバイオプロセスの創出にもつながることが期待されます。

図 本技術が解決するバイオプロセス開発中の課題

技術の概要

ノンターゲット計測技術では、培地や菌体を対象試料とし、培地サンプルであれば1 mL程度で解析が可能です。試料を前処理した後、構造解析に優れた質量分析装置を用いて分析を行い、検出された代謝物由来のイオンから、プロダクトイオンスペクトルを網羅的に取得します。

得られたプロダクトイオンスペクトルに含まれる部分構造情報をインフォマティクス技術によって解析し、代謝物の化学構造を推定します。

本拠点では、多量の塩類や糖む培地サンプルから高品質なデータを取得するための前処理・計測ノウハウに加え、高度なインフォマティクス技術を活用した構造推定に強みを有しています。

活用例

コリネ型細菌の培養を1 Lから20 L へスケールアップした際、培養条件を最適化しても、微生物の増殖が大きく遅延するという課題がありました。その原因として、小スケールではオートクレーブ滅菌を行う一方、大スケールでは培養槽へ高温蒸気を直接導入する蒸煮滅菌を採用しており、滅菌方法の違いが培地成分に影響を及ぼしている可能性が考えられました。

そこで、滅菌方法の異なる培地をノンターゲット解析により比較したところ、消泡剤由来と考えられるポリマー成分が変化していることが分かりました。この知見に基づき、消泡剤のみを別途オートクレーブ滅菌した後に培地へ、添加する方法へ変更した結果、20 L培養槽におけるコリネ型細菌の増殖遅延を改善することができました。

利用方法

バイオものづくり計測拠点では、構造解析性能に優れた質量分析装置を活用し、データ取得技術およびデータ解析技術の高度化を進めています。

本技術の活用をご希望される企業、研究機関の皆様には、共同研究を通じて技術をご提供いたします。提供いただいた培地や菌体などのサンプルについては、本拠点において前処理、質量分析によるデータ取得、データ解析、構造推定までを一貫して実施し、研究開発を支援いたします。