現場よもやま話 no.6

大型タンクの酸素移動容量係数(kLa)測定

通気攪拌培養における、酸素供給能力評価の重要性は一致した意見であると思うが、大型設備での経験者は意外と少ないのではないだろうか?筆者が行った10m3培養槽でのkLa測定(亜硫酸ソーダ法)の経験談を紹介したい思う。

 小型ジャーの場合は、計測条件数に応じて亜硫酸ソーダ水溶液を複数台のジャーに調製する、あるいは単独ジャーを使って「調製→測定→廃棄→調製・・・」を繰り返して複数回の計測を実行できるが、大型設備ではそう簡単にいかない。培養槽での亜硫酸ソーダ溶液調製が大掛かりな作業となるため(例えば、20kg入り原料を複数作業者で投入等)、1回の溶液調製で複数条件のデータ取得を迅速に実行するような、作業設計が求められる。

例えば、下図のようなデータ取得の全体計画をまず立案する。攪拌回転数は低速~高速の3水準、一条件のkLa測定に4回の滴定を行なう場合を想定すると、合計12回の滴定操作が必要になる。投入した亜硫酸ソーダが酸素を消費し尽くして全て硫酸ソーダに変換されると計測は終了となるため、各通気攪拌条件におけるkLa予測値を元にサンプリング間隔や滴定作業時間の作業設計を行ない、計12回の滴定操作が亜硫酸ソーダの酸素吸収量キャパ内に収まるように、綿密な計画を立てておくことが重要となる。

亜硫酸ソーダの定量は、ヨウ素と反応させた後、過量のヨウ素をチオ硫酸ソーダで逆滴定し、反応に要したヨウ素量から亜硫酸塩を定量する方法が一般的に知られている。この方法の場合、ヨウ素添加が酸素消費の停止反応となるため、サンプリングして素早くヨウ素添加を安定的に繰り返すことが、計測精度の向上に繋がる。筆者が実施した時は、一人の滴定作業員の元に、次々と反応停止済みの溶液が渡され、滴定作業者は結果を直ちに計測監督に報告、監督はその場で迅速に計算して実験計画(kLa予測値等)とのズレを確認してサンプリング間隔調整や攪拌条件設定のフィードバックを現場オペレータに伝える、このような人間フィードバック制御を監督が進めることで所定の計測点数を獲得するような、慌ただしい計測実験であった。綿密な計画と、監督・滴定・設備操作・サンプリング者らの連携プレーによって、数少ない亜硫酸ソーダ溶液調製で多くのデータを取ることができた。あと、実験終了後の硫酸ソーダ溶液廃棄の計画(排水処理キャパ確認等)も大切なことになる。

何れも基本的なことであるが、現場でkLa測定を計画している皆さんの一助になれば幸いである。

(執筆:K.Hi.)