現場よもやま話 no.5 

給気ラインの殺菌不良教訓 

培養槽での回分殺菌方式は、有菌の培地原料を培養槽に張り込んでから蒸気殺菌する。たとえ、培養槽を空殺菌等で清浄にしても、この培地張り込みで設備を汚染させるため、殺菌工程において培養槽の複雑な配管バルブ類に高圧蒸気を完全に行き渡らせる設計が要求される。この当然とも思える前提を再確認したうえで、給気ラインの設計教訓を紹介させて頂く。 

やや特殊な研究開発目的のため、培養槽内部の構造物を少なくしたいと考え、給気スパージャー配管(下り縦配管)を培養槽外部に設ける設計製作を行なった(容積数m3、図A-赤線)。殺菌工程は、この配管からスパージャーを経て培地に蒸気吹込みを行なうことで、培養槽・配管バルブ類と培地を丸ごと同時に殺菌することになる。殺菌保持時間終了と同時に、蒸気から無菌空気吹込みに切替えることによって、蒸気凝縮による配管内陰圧化を防ぎ、培地がスパージャー内部に吸い込まれないように操作する。培養工程中は、スパージャー配管内は、給気圧によって常に培養液からの侵入圧に勝るように設備設計・操作設計を行なう。このようにスパージャー配管内への逆流を防止する設計を万全にしていても、必ず培地成分の一部はスパージャー内部に侵入すると考えて洗浄対策等をしなければならない。 

このようなスパージャー逆流現象の認識から、下り縦配管への蒸気流量を強める操作設計を取り入れるとともに、殺菌時の温度管理を強化するようにしていた。しかし、本設備でいざ培養試験を行なうと、かなりの確率で、殺菌不良が原因と思われる雑菌汚染が多発した。培地成分に、不溶成分(粉末)を採用していたことも事態を悪くしていたと考える。この下り縦配管に対して、保温断熱材を新たに巻いたり、殺菌温度を上げる改良を加えることで汚染率は低減したが、安心して使える状態には遂にできなかった。いくら蒸気供給を確実にして温度管理を強化しても、121℃以上の液体に完全浸漬しているタイプ(図B)に比べると、室温に晒されるタイプ(図A)は配管内部温度の完全性が劣るようである。培地張り込みで汚染した(空気圧で押しても内部侵入の完全ゼロ化はできない)スパージャー内部を完全殺菌するためには、高温液体の熱伝導をフルに生かせるB型が推奨で、A型は避けるべき、これを筆者らの結論として紹介させて頂く。 

(執筆:K.Hi.)