現場よもやま話 no.2

培養液を顔に浴びる出来事

大型培養槽では、汚染防止のため内圧をかけて陽圧保持することに加えて、液深水圧がプラスされるため、サンプリング口を開けると勢いよく培養液を採取できる。言い換えると、小型ジャーのように、ピペットやポンプ等を使ってサンプルを吸い出す必要が無い。

 筆者が高粘度の培養液を扱っていた時は、ゆっくりとサンプリングすると液詰まりの恐れがあったため、素早く採取する必要があった。このため、サニタリー仕様の培養タンク本体バルブの外側に、クイックで開閉操作できるボールバルブを設け、適量のサンプル採取するようにしていた。サンプル容器を傾けて採取して泡立ちを低減したり、クイック操作の時間感覚を体で覚えるなどの現場ノウハウがあった。

 ある時、バケツ一杯になるくらいの大量の培養液が必要となった。そこで、胸くらいの高さにあったサンプリング口にホース(φ1インチ)を接続し、ホースから排出される培養液をバケツで受けることにした。いざ採取となり、サンプリング口へのホース固定を確認し、ボールバルブを開けると、勢いよく培養液がホースに押し出されてきた。その直後である、培養液の吐出圧でホースが動き出し、ホース先端が現場で踊り回りながら周囲に培養液をまき散らしてしまった。慌ててバルブを閉じたが、時すでに遅し、筆者も顔に大量の培養液を浴びることになった。幸いにも、浴びた液は食品原料でもあったため大事には至らなかったが、もしも薬液や高温液体だったら大変な事態になっていた。

 現場の安全活動では、作業イラストを見ながら、想定される危険を抽出して意見交換する危険予知トレーニング(KYT)が職場グループ単位等でよく行われる。筆者のサンプリング作業は、危険予知(KY)を全くできていなかった初歩的なミスによるものである。この事例をKYTで取り上げると、その対策例として「ホースの出口を固定する」「サンプリング操作とホース出口固定の複数作業員で行う」等の回答になるケースだったと思う。工場現場だけでなく、小規模のラボ環境でも多くの危険が潜んでいるので、日頃からKYのクセを身に付けるようにして、安全なラボ環境整備や作業改善に努めていって欲しいと考える。

(執筆:K.Hi.)