オンライン計測の現場導入
培養分野では、様々な計測センサーが活躍している。温度や圧力に加えて、pHセンサーやDOセンサーによる培養のモニタリングに留まらず、酸・アルカリの自動添加システムを構築して、増殖や生産に適したpHに制御することも研究室ではごく普通に行われている。ではこの技術を、そのまま生産現場で使えるか?というと、そう簡単ではない。
培養槽などの製品タンクにpH電極を取り付ける場合、万が一、電極破損が起こった場合の異物混入、取り付け不良による液漏れ(液深等によりラボよりかなり高圧)、作業ミスによる電極破損や作業員のケガなど、安全面での多くの配慮が求められる。さらに、pH電極は、ごく少量の内部液が液絡部を経て測定対象に流出する原理に基づいているため、製品培養液に混入する超微量の内部液成分を、品質的に許容できるかどうかという点も議論の対象になる。どうしても製品のpH連続モニターが必要な場合、タンクのサンプリング口から少量の液を垂れ流しにしながらタンク外で連続計測を行って計測後の液は廃棄する、このような手段をとっている工場もある。
このような制約があるので、生産現場の培養オンライン計測は、サニタリー仕様の温度計(熱電対など)と圧力計(封入液レス型など)だけといったシンプルな場合が多数あるのではないだろうか。研究開発でpHオンライン計測&自動制御を前提としたプロセス設計していると、いざ生産現場にスケールアップした時にこのような問題で躓くこともある。現場設備の制約条件を確認しておいたり、サンプリング測定だけで工程管理する方法を考えておくなど、現場導入に伴う課題と解決策をラボの研究開発段階からイメージすることが大切だと思う。
(執筆:K.Hi.)