実用化を見据えた実験用の培養槽サイズは?
研究開発から生産に移る時、何を(項目)どこまで(許容範囲)どのスケールで(培養槽サイズ)確認すれば、培養技術として再現OKとするか??非常に悩ましい課題である。シビアな品質が要求される場合は、生産設備そのものでの初回培養を研究開発の最終ステップとして計画することが一般的に行われていると考えるが、万が一の失敗における損失を考えると、生産設備で挑戦的なことはできないので、損失の小さい小スケールで実験を重ねてリスクを見極めてから、いざ生産設備での実験的生産になる。
小スケールで挑戦回数を重ね、その変動幅や、重要な管理指標の傾向を蓄積するだけでなく、生産設備と小スケールの相関関係(スケールアップに伴う、結果のブレ幅や変化傾向)を知っておくためにも、結局は、生産設備で実験的生産を重ねることが肝心となる。このように、小スケール実験と生産設備の間で、培養データのキャッチボールを繰り返し継続していくことが、生産技術の成熟に繋がっていくと考える。
では、どのくらいの規模で小スケール実験を進めておくのが生産とのキャッチボールに有効なのか?筆者は2つの観点があると考える。
・生産設備と原理的に同じ設備を使う
⇒試験管やフラスコでは無く、通気攪拌槽(ジャーファーメンター)を用いて、剪断力や溶存酸素濃度を生産と同等オーダーに合わせる。できれば、圧力影響(培養液深、ヘッドスペースの加圧)も合わせる(加圧制御可能な装置を使う)。
・設備規模に起因する液組成影響を考えておく
⇒液量当りの設備接触面積比が小スケールでは大きくなる。これに起因する、培養液の淀みや付着影響を考慮する。培地殺菌時の加熱生成物が影響する場合もある(別殺菌して実験する等の工夫も時には必要)。
筆者が携わっていた培養系では、付着性を有し不均一になりやすい糸状菌の高粘度培養では数十リットル程度、酵母・細菌のように液の均一性確保が比較的容易な場合は数リットル程度のジャーファーメンターを主な実験スケールとしていた。大型ジャーファーメンターになればスケールアップ再現のリスクは減るが、費用増と実験水準数減という現実的な課題を伴う。培地や光熱費などの直接費用に加えて、培養液の排水処理や設備メンテナンス(第一種圧力容器の法定点検など)も影響するため、様々な観点を総合して検討し、挑戦に適した実験環境を整えることが重要と考える。 (執筆:K.Hi.)

