安全作業

培養タンクの入槽洗浄

大型設備では自動洗浄の導入がよく行われるが、槽内に構造物を有する通気攪拌培養槽では限界があるため、人が入槽して手洗いするケースもある。本稿ではタンク内で手洗いした筆者の経験を紹介する。

 まずタンクを冷やしておくことから準備が始まる。これは、作業環境の温度調整と、タンク内壁を結露させてて付着汚れを湿潤させる(洗浄を容易にする)、この二つの目的で実施していた。そして入槽時には安全対策として、装置攪拌機等の電源ブレーカー遮断と回転防止ロック、各種接続配管からの液体や熱媒体の流入防止を確実に施す。人員配置は、入槽作業者に加えて、タンクマンホールと設備遠隔モニター前の両方に監視役を配置。培養槽の底弁開放とタンク内通気の確認、そして酸素濃度の計測(計測機自体の確からしさもチェック)をし、安全具を装着していざ入槽となる。

 縄梯子を伝ってタンク底に到達しても、底面形状は平坦ではなく、曲面加工されているため、足元のバランス要注意の状態が作業終了まで続く。金属円筒の中に身を置くだけでも、ストレスを感じるものだが、筆者が入槽した時は、底弁開放と、スパージャーに手を当てて空気供給を触診確認することで、少し気持ちが楽になった。マンホール入口の監視役と言葉をかけあいながらのコミュニケーションも、ストレス軽減に繋がる重要な行動であり、監視役が少しでも視界から離れると、不安な気持ちに襲われる。

入槽洗浄は決しておススメできないが、様々な気付きもある。菌の汚れが、ネジ部の隙間に入り込んでいる状態等を見ることで難洗浄部位がよく理解できる。さらには、攪拌翼サイズが意外と小さい大きいといった感覚をはじめ、邪魔板と槽内壁の間の隙間、スパージャー孔の配置や向き、攪拌翼の固定方法や高さ、など槽内部で現物を触ることで、図面では目の届きにくい設計への様々な気付きもあった。入槽作業を計画している皆さんの参考になれば幸いである、ご安全に!

(執筆:K.Hi.)